MISO Soup
おいしい生活
食べ物がおいしそうな漫画・小説って、いいよね。

小説だと池波正太郎が有名だけど、ほんとにこの人の食べ物の描写ときたらたまらない!
剣客商売にでてきた「根深汁」は日本人垂涎必至。昔つい『包丁ごよみ』を買ったからレシピはあるんだけど、腕に自信が…おはるさんうちに嫁にきてくれんか…

漫画だと、萩尾望都もなかなかいい線なんじゃないかと最近思う。
むかしの作品でおいしそうだと思ったのは『オーマイ ケ・セィラ セラ』の紅茶かなんかにシロップを「とろー」っとやってスプーン舐めるところ。このシーン自体がすごく好き。

「かつてわたしを心より愛した人があったという記憶はなんとゆたかなものだろうと」

読んでるだけであまい味が口にひろがるような、とろけそうに柔らかで切ないながらも軽やかな描写だ。このころ独特の萩尾作品の持ち味を噛み締めるひとこまよねえ。うっとり。

萩尾作品は『メッシュ』以降のおいしそう度がどかんと上がってる気がするの。

『残酷な神が支配する』なんて、話が凄絶で気付かなかったけど食べ物の描写がこまかい!
イギリスだから紅茶ばっかり飲んでるし、ジェルミの料理はTVディナーだけどイアンのは手作りだなんて想像もわいてくるような微細な描写、リアルだ。

「ジェルミの味付けが塩からい」ってとこなんかはジェルミの精神状態を表すエッセンスになったりもしていてうまいよなあ。

アメリカ人とイギリス人が味覚を語るなYO!と思わなくもないけれど(笑)ジェルミが「このバター賞味期限今日だけど、今日中に食えばいいね」と言っているのにぶったまげたわ。バター一缶を二人で一日で食うの…?( ゚д゚)おそるべし…

こうして食べ物の描写がリアルになったのと一緒に、作品の中の人間もリアルになったと思う。

絵柄や雰囲気ががらりと変わっても相変わらず萩尾作品の少年は硬質で、描き手が作品に埋没していないが故のガラスごしに手出しを許さない凛とした空気、完成された美しさはあるんだけれど、そこに生きる人々の生活がリアルになった。

とくに女の子や大人が人間ぽくなったなあと思う。身体の描き方が変わったせいもあるだろうけれど。

人の魂に迫った、と言うのかなあ。

当たり前に食べて排泄して生きる人間を描く人になったんだなあという感じです。

だから、ジェルミやイアン、サンドラ、グレッグ、バレンタイン、ナディア…ひとりひとりに生の軌跡がありその逡巡や目覚めの吐息が感じられて、その軌跡がときに錯綜しあい呼び合い共鳴し収束し広がりゆく。すべての足が地を踏み締めるのを感じる。
これだけの登場人物をはっきりと息づかせた上で物語をまとめるこの力量はまさに天才だとおもうんだけれど…漫画ノーベル賞だかなんだかができたようですが、萩尾望都がとらずに誰がとるのその賞?ってかんじよ。



こう、表現者が色を失わずに変化していくのって…いいよね。

萩尾もー様は団塊の世代ってやつで、失礼ながらこういった変化をとげたときは若さほとばしる年齢ってわけじゃないと思うのよね。
そういうもんだよなあと思う。魅力的な人はくるくるとその魅力を増していくのだと。その体力を見るにつけほれぼれ。

ひるがえって自分は…体力ないなあ、どうみても。ノン!
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